消費者ニーズの変化にどう対応?国内シューズ銘柄7選とその戦略

ジーフット

私たちの足元を支える靴。それは単なる履物ではなく、日々進化を続ける技術やトレンド、そして企業の創意工夫が詰まった市場でもあります。

高機能素材の開発や人間工学に基づいた設計など、より快適な歩行やパフォーマンス向上を追求する動きが見られます。さらに販売チャネルも多様化が進んでおり、実店舗とオンラインを融合させた購買体験を提供する企業も登場しています。

また、健康志向の高まりや環境意識の変化は、靴選びの基準にも影響を与えています。足の健康をサポートするとされる機能性シューズや、サステナブルな素材を使用した製品など、社会的な価値観を反映した商品開発も行われています。

このように、シューズ市場は技術革新、販売戦略、そして時代のニーズを捉えた商品開発といった多角的な側面から、常に変化しています。

本記事では、そうした市場環境の中で、様々な取り組みを行っている企業の中から、いくつかの事例を紹介していきます。

革新的技術でシューズ市場をリードする「アシックス」

株式会社アシックスは、1949年に創業して以来、スポーツシューズを中心に事業を展開する企業です 。

同社は、ランニングシューズの「GEL-KAYANO」シリーズや「NIMBUS MIRAI」など、長年にわたり培ってきた独自の技術力を背景に、高機能・高品質な製品を提供し続けています 。特に、衝撃緩衝性に優れたGELテクノロジーは、同社の競争優位性の核となっています。

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アシックスは「健全な身体に健全な精神があれかし」という創業哲学のもと、人間中心の科学に基づいた製品開発を推進。近年では、サステナビリティへの取り組みも強化しており、リサイクル素材を使用したシューズ開発や、CO2排出量削減を目指した循環型ビジネスモデルの構築を進めています 。

健康志向の高まりやスポーツ人口の増加を背景に、高機能ランニングシューズ市場の拡大が見込まれています。アシックスは、技術的リーダーシップに加え、デジタル技術を活用したパーソナライズサービスの展開や、DTC(Direct to Consumer)戦略の強化により、市場シェアの拡大を目指した取り組みを行っています。

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多彩なブランドで足元を彩る「ダブルエー」

株式会社ダブルエーは、2002年に「ORiental TRaffic」ブランドをスタートさせ、婦人靴の企画・販売事業を核として成長してきた企業です。

「ORiental TRaffic」の他にも、「卑弥呼 (HIMIKO)」、「NICAL」など、ターゲット層やテイストの異なる複数のブランドを展開することで、多様化する顧客ニーズに応えています。

「ORiental TRaffic」では21.5cmから26.5cmという豊富なサイズ展開も、多くの顧客の支持を集めている要因のひとつでしょう。

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同社の強みは、自社で商品の企画から販売までを一貫して手がけるビジネスモデルにあるとされています。これにより、トレンドを商品開発へ反映させ、製品を市場に供給しています。

また、実店舗網に加えてECにも注力し、国内外での販売チャネルを拡大しています。近年は株式会社卑弥呼をグループに加えるなど、ブランドポートフォリオの拡充も進めてきました。

変化の激しいファッション市場において、独自のブランド戦略と企画力、そして販売チャネルの最適化を通じて、女性の足元を支える企業として事業展開を行っています。

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BROOKS販売と独自の衝撃吸収素材の活用「アキレス」

アキレス株式会社は、シューズ、プラスチック、産業資材の3事業を展開する企業です。

シューズ事業では、消費者の健康志向の高まりなどを背景に、特定のブランドが市場で評価されています。アキレスが販売権をもつ米国ランニングシューズ「BROOKS」は、ランニング人口の拡大などを背景に販売が推移しています。

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また、同社独自の衝撃吸収素材「ソルボセイン」を搭載したコンフォートシューズ「アキレス・ソルボ」も、その機能性と履き心地の良さから支持を集めています。この「ソルボセイン」は、同社の技術力を示す一例と言えるでしょう。

一方で、シューズ事業全体としては、一部商品群の販売状況や、原材料価格・エネルギーコストの上昇など、事業環境における課題も認識されています。同社は、市場での競争力維持・強化のため、ブランド育成や事業全体の効率化などに取り組んでいます。

同社は生産性向上や新しい価値創造に取り組む方針を示しており、シューズ事業においてこれらの取り組みを進めています。

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コストパフォーマンスとデザインの両立「ヒラキ」

ヒラキは、通信販売(インターネット、カタログ)、店舗販売、卸売りと多角的な販売チャネルを持つ総合シューズ企業です

メンズ、レディース、キッズと幅広い世代に向けたシューズを提供。日常使いのスニーカーからビジネスシーンに適した革靴、季節ごとのサンダルやブーツなど、多様なニーズに応える豊富なラインナップが特徴です。

コストパフォーマンスとデザイン性を両立させた製品は、幅広い顧客層から支持を集めています。

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同社はEC事業の強化に取り組んでおり、オンラインストアの受注構成比は年々上昇。長年培ってきたノウハウを活かし、「価格」と「品質」の両立を追求することで、お客様に喜ばれるモノづくりを目指しています。データの活用は棚卸資産の適正管理などにも用いられています。

近年、事業環境が変化する中、同社はEC強化を含むビジネスモデルの進化を図り、多様な商品を提供することで、事業の継続的な発展を目指しています。

ハンズフリーシューズがヒット「チヨダ」

チヨダは、靴の企画開発、靴専門店としての販売に加え、ECサイトなどの販売チャネル拡大に注力している企業です。

同社は、顧客目線での商品開発を強みとしています。

なかでも、「スパットシューズ」は手を使わずに立ったまま履けるハンズフリーシューズの代表格ブランドです。新たなカテゴリーの発売により客層を広げ、テレビCMやデジタルマーケティングを通じてさらなる認知度向上を図った結果、年間150万足を超える大ヒット商品へと成長しました。

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また、働く女性の声を反映したプライベートブランド「フワラク」では、定番のベーシックパンプスに加え、ウェッジスニーカータイプの種類を増やすなど、時代の変化に合わせた提案を行っています。

これらのヒット商品は、同社の「専門店ならではの商品開発・提供」という強みを最大限に活かした事例と言えるでしょう。

EC販売にも力を入れており、オンラインストアと実店舗の相互連携を強化することで、顧客の利便性を高めるOMO戦略を推進しています。

変化の激しい現代において、チヨダは、顧客のニーズを的確に捉え、革新的なPB商品の開発に引き続き注力しています。

トレンドに基づいた品揃えを強化する「ジーフット」

株式会社ジーフットは、靴の企画開発、ECサイトを含む販売を行う企業です。

同社は、多様化する顧客のニーズに応えるため、「婦人靴」「紳士靴」「スポーツ靴」「子供靴」といった幅広いジャンルのシューズを取り扱っています。

中でも、スポーツシューズは売上高構成比の42%を占める主力商品であり、MD構造改革において、トレンドをおさえたスポーツシューズ品揃えを強化しています。

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ECサイトでは、実店舗と連携したOMO戦略を推進しており、顧客利便性と店舗業務効率の改善を軸に、オンラインとオフラインの融合を進めています。

3月には自社アプリ「アスビーアプリ」のリニューアルを実施し、アプリ会員数は125万人を突破しました

変化の激しい市場環境の中、株式会社ジーフットは深刻な財務状況にあります。事業再生計画に基づき、多様な顧客に最適なシューズを提供できる商品力の強化や、顧客利便性を追求する販売戦略を推進することで、経営基盤の再構築と業績回復を目指しています。

JELLY BEANSブランドで再起を目指す「ジェリービーンズグループ」

ジェリービーンズグループ(旧:株式会社アマガサ)は、婦人靴ブランド「JELLY BEANS」を主力に、30代から40代の女性をターゲットとしたノンレザーシューズの企画・販売を手掛ける企業です。

自社でのデザイン企画と、取引メーカーへの生産委託、そして直営店・百貨店・ECサイトを通じた多角的な販売チャネルが特徴です。

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同社は長年、主力ブランド「JELLY BEANS」を中心に事業を展開してきましたが、近年は市場環境の変化に対応しています。これに対し、EC事業の強化、店舗運営の効率化、在庫管理の最適化といった事業施策を推進しています。

物流子会社の設立や新規事業領域への進出など、グループ全体での事業基盤強化も図っており、「JELLY BEANS」ブランドの事業展開を進めています。