昨年の懸念、今年の反発
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2020年9月、H&Mは新疆ウイグル自治区からの綿花の調達を取りやめる方針を発表した。理由は、中国政府がウイグル族を強制労働させている疑惑を「深く懸念している」ため。
先日、このコメントが中国の国営メディアで取り上げられ、「虚偽に基づく不当な扱いだ」という中国内での批判を呼んだ。不買運動が広がり、同自治区にある店舗は閉鎖にまで追いやられた。
アリババやJD.comなど主要なECサイトで検索ができなくなり、北京の一部店舗がバイドゥなどの地図アプリ上に表示されなくなった。
H&Mは過去10年間、中国における事業拡大を推進してきた。店舗数は2010年の47店舗から10倍以上に拡大。売上高は今やグループ全体の5.5%(≒1,237億円)にのぼる。国別では4番目に大きい。
ここ数年は成長が伸び悩んでいたのも事実だ。グループ全体の店舗数は5,018店舗。実に1割強が中国。不買運動の拡大は、成長停滞に対する更なる追い討ちになりうる。
影響は広がっている。ナイキも昨年、ウイグル迫害問題についての懸念を明らかにした。やはり中国では批判に晒され、中国事業の広告塔だったタレント2人との契約を解消する事態となった。
新型コロナの感染が再拡大するヨーロッパでは苦戦が続く。立ち直りが早い中国市場の重要性は増している。動向次第では、今後の成長を大きく左右しそうだ。