年間56億ドル
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3月23日、海運の「大動脈」とも言われるスエズ運河が、日本企業が所有するコンテナ船によって塞がれるという事件が発生した。
座礁したのは全長400メートルの「エバーギブン」。強風と砂嵐によって操舵不能に陥ったことが原因と推測されている。
スエズ運河は地中海と紅海をつなぎ、アフリカ大陸を周らずヨーロッパとアジアを海運で通行できる。これによって短縮される距離は8,000kmにのぼる。
ナイル川を通じて紅海につながる運河は、古代エジプトの時代から作られてきた。責任者はファラオだ。王朝の衰退もあり、長く維持されることはなかった。
近代的な運河建設を本格的に検討したのがナポレオン。その調査報告書に触発されたフランスの外交官レセップスが1859年に着工、10年がかりでスエズ運河を完成させた。
当初経営は難航し、エジプト政府は運河会社の株をイギリスに売却。政府の財政状況も破綻しており、イギリスはエジプトを保護国化する。
1956年にはエジプトがスエズ運河を国有化しようとするがイギリスが反発、フランスなどを誘ってスエズ戦争が勃発した。国連軍などが調停にあたって国有化が成立。その後の拡張工事では、日本企業も貢献した。
2020年、エジプト政府におけるスエズ運河の年間収入は56億ドルにのぼった。歳入の1割前後を占め、主要な外貨獲得手段でもある。