決済代行サービス銘柄:BNPL・自動化・MaaSなど多様な戦略に迫る

現代の経済社会において、キャッシュレス決済は急速な普及を遂げ、私たちの生活やビジネスに不可欠なインフラとなりつつあります。
EC市場の持続的な拡大に加え、実店舗における決済手段の多様化、さらにはBtoB取引におけるデジタル化の進展が、この潮流を力強く後押ししています。
このような市場環境下で、決済代行サービス業界では、単に決済処理機能を提供するだけでなく、より付加価値の高いソリューションへの展開が鮮明です。
例えば、BNPLの普及や、サブスクリプションビジネスに適した継続課金システムの提供、請求業務全体の自動化・効率化を支援するクラウドサービスの開発などが活発化しています。
また、MaaSや特定業種に特化したDX支援、AIやIoTといった先端技術の活用も進んでおり、決済データを起点とした新たなビジネスモデルの創出が期待されています。
本記事では、このような進化を続ける決済代行サービス市場において、独自の戦略で成長を目指す銘柄を紹介します。
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GMOペイメントゲートウェイは、EC市場の拡大を背景に、クレジットカード決済をはじめとする多様な決済手段を提供し成長を続けてきました。
決済代行事業に加え、加盟店への融資や後払い決済といった金融関連事業、さらにマーケティング支援などの決済活性化事業も手掛け、決済を起点とした多角的なサービスポートフォリオを構築しています。
同社は、オンライン決済のみならず、対面決済市場や金融機関・事業者向けのBaaS支援といった幅広い領域で強固なポジションを確立しています。
オンライン課金・継続課金分野で多様な決済手段に対応する決済代行サービスを提供しており、対面分野では「stera」シリーズの端末販売なども開始しています。
また、「GMO後払い」やBtoB取引向け後払い決済「GMO掛け払い」、給与即時受け取りサービス「即給byGMO」といったFinTechサービスも提供しており、決済起点のイノベーションに取り組んでいます。
近年では、保育・教育業界のキャッシュレス化・DXを推進する株式会社エンペイ(現 GMOエンペイ株式会社)を子会社とするなど、特定業種向けのソリューションも提供しています。
一方で、世界情勢の変動が民間消費に与える影響は潜在的なリスク要因として挙げられます。
しかし、同社は公共料金や医療など、景気変動の影響を受けにくい分野への展開や顧客の業種分散を進めているため、事業運営上のリスクは一定程度ヘッジされていると考えられます。
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株式会社ROBOT PAYMENTは、2000年10月に設立され、決済を軸に企業の商取引を効率化するソリューションを提供しています。
同社は、「商取引を自由にする決済インフラで、再び日本を強くする」というビジョンのもと、企業が抱える「慣習」「非効率」「与信」といった課題解決への貢献を目指しています。
同社の事業の柱の一つであるペイメント事業では、多様な決済手段に対応し、特にサブスクリプションビジネスに適した「サブスクペイ」を提供することで、顧客の継続的な収益モデルを支援しています。
加えて、後払い決済ニーズに対応する「1click後払い」といった新サービスも展開し 、市場の変化に対応したサービス拡充を図る姿勢が見られます。
もう一つの主要事業であるフィナンシャルクラウド事業では、「請求管理ロボ」や「請求まるなげロボ」といったクラウドサービスを展開しています。
これらを通じて、請求書発行から集金、消込、催促に至る一連の請求業務を自動化し、企業のバックオフィス業務のDX化を推進しています。
Salesforceなどの外部システムとの連携も行っており、これがサービス提供における特徴の一つとなっています。
EC市場の持続的な成長や、インボイス制度といった法制度改正を背景とした企業のDX化への関心の高まりは、同社の事業成長にとって良好な市場環境と言えるかもしれません。
しかしながら、マクロ経済の不透明感や、サービス拡充・顧客サポート体制の強化に伴う一時的なコスト増の可能性は、事業運営におけるリスク要因として注視が必要です。
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株式会社ネットプロテクションズホールディングスは、2000年設立の株式会社ネットプロテクションズを前身とし、2018年に持株会社体制へ移行した企業です。
主力事業は、購入者が商品やサービスを受け取った後に支払いを行うBNPLサービスの提供であり、ECサイトを中心としたBtoC取引向け、およびBtoB向けに幅広く事業を展開しています。
同社の中核サービスであるBtoC向け「NP後払い」は、商品確認後の支払いを可能にすることで購入者に安心感を提供します。
また、会員制の「atone」はスマートフォンを活用したBNPL決済サービスであり、月締め翌月払いなどの特徴があります。
BtoB向けには「NP掛け払い」を提供し、企業間取引における請求業務の効率化と未払いリスクの軽減に貢献しています。
さらに、台湾では「AFTEE」ブランドでサービスを展開し、ベトナムにも現地法人を設立するなど、海外市場への展開も積極的に進めています。
これにより、国内市場の成長に加えて、アジアを中心とした海外市場での事業拡大も視野に入れています。
今後、BNPL市場そのものの拡大、そしてBtoB領域における請求業務のDX化の流れは、同社にとって事業機会となるでしょう。
一方で、市場の成長性に着目した国内外の競合他社との競争激化や、各国における法規制の変更、さらには事業の根幹である貸倒リスクの適切な管理は、持続的な成長に向けた重要な課題と言えます。
>>ネットプロテクションズについてもっと詳しく:国内BNPL決済のパイオニア「ネットプロテクションズHD」が東証一部上場へ
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ビリングシステム株式会社は、2000年に設立され、多岐にわたる決済ソリューションを提供する企業です。
為替・金融先物取引会社等向けのクイック入金サービスや、通販事業者等向けの収納代行サービス、インバウンド需要に対応する「WeChatPay」「Alipay+」など、幅広い決済関連事業を展開しています。
同社の「PayB」は、公共料金や税金の払込票をスマートフォンで決済できるサービスで、利用可能な払込票発行機関・団体を拡大しています。
さらに、ATMでの「PayB」支払いサービス「ATM PayB」も展開し、決済チャネルの多様化を進めています。
今後の成長戦略として、同社は「国内決済基盤の拡充」をテーマに掲げています。
具体的には、既存サービスの強化・深化、教育・医療等特定業種向けソリューション構築、ペーパーレス請求・決済サービスの推進、「PayB」の法人向け展開、アライアンス強化や新サービス開発等に取り組む方針です。
国内市場では、キャッシュレス決済比率が政府目標を前倒しで達成するなど、継続的な市場成長が見込まれており、同社の多角的なサービス展開と成長戦略がどのようにシェア拡大に繋がるかが期待されます。
一方で、不安定な世界情勢等に起因する事業環境の不確実性、決済市場における競争環境の変化などは、事業運営上のリスク要因として注視が必要でしょう。
>>ビリングシステムについてもっと詳しく:45歳の時に銀行員から起業家になることを決意!国内決済ソリューションを提供する「ビリングシステム」
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ウェルネット株式会社は、1983年に設立された決済・認証事業を主要ドメインとする企業です。
マルチペイメントや送金等の基盤サービスに加え、スマホ決済アプリ「支払秘書」、交通向けクラウド「アルタイルトリプルスター」、会員管理DX「ekaiin.com」等、多様なソリューションを提供しています。
同社は、ペーパーレス化やキャッシュレス化を推進し、社会全体の効率化に貢献することを目指しています。
「支払秘書」は、主要銀行との接続を完了し、電力会社や公金支払いなど利用シーンを拡大中です 。
また、交通事業者向けには、チケット予約から精算処理までを一元管理できる「アルタイルトリプルスター」を提供し、MaaS基盤としての役割を強化しています 。
決済市場におけるコモディティ化の進行を見据え、「決済+α」の付加価値提供に注力しています。
さらに、電子マネーを自社のサービスアプリに組み込む流れが出てくると予測しており、安全性を高めた組み込み型電子マネーの提供準備を進めるなど、新たな技術開発への取り組みも行っています。
今後、交通分野におけるMaaSの進展や、企業における会員管理・請求業務の電子化ニーズは、同社のサービス拡大を後押しする要因と考えられます。
他方で、新規事業投資の効果不確実性、特定取引先への依存などについては、事業運営上の潜在的リスクとして常に注意を払う必要があります。
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株式会社電算システムホールディングスは、「共創」を経営理念に掲げ、情報サービス事業と収納代行サービス事業を主要な柱としています。
情報サービス事業では、情報処理やシステム開発、クラウドサービスなどを、収納代行サービス事業では、コンビニ収納代行やオンライン決済サービスなどを提供しています。
情報サービス事業においては、企業の基幹業務を支援するBPOや、顧客ニーズに応じたシステムインテグレーション、ソフトウェア開発を手掛けています。加えて、Google Workspaceをはじめとするクラウドサービスの導入支援や関連商品の販売も行っており、企業のDX推進に貢献しています。
また、収納代行サービス事業では、地方自治体や民間企業に対し、総合決済プロバイダーとしてサービスを提供しています。
子会社であるDSKペイメント等とともに、変化する決済ニーズに対応し、サービスを拡充しています。
さらに、債権保証型後払いサービスや送金サービスも提供し、企業の決済業務を広くサポートしています。
同社グループは、「Challenge 1000 2027」という成長目標を掲げ、DSK Transformation(DX)をキーワードにAIやIoTといった先端技術分野への取り組みを強化しています。
しかしながら、システム開発における収益性確保、そして情報セキュリティ体制の維持・強化は、事業運営上のリスク要因として認識しておく必要があります。
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株式会社デジタルガレージは、インターネットビジネスの黎明期から多岐にわたる事業を展開してきた企業です。
事業は主に、決済PF提供「プラットフォームソリューション」、戦略事業開発「ロングタームインキュベーション」、国内外スタートアップ支援「グローバル投資インキュベーション」の3セグメントです。
プラットフォームソリューション・セグメントでは、EC・対面店舗向けに多様な電子決済手段をワンストップで提供する決済プラットフォームを構築・運営しています。
また、決済に留まらず、デジタルマーケティングやCRMを組み合わせ、金融フィンテック領域のエコシステム構築にも注力。
近年は対面決済領域でのアライアンス戦略で決済取扱高拡大を図っています。
ロングタームインキュベーション・セグメントでは、決済と連動するDX/フィンテック領域で戦略事業を開発。
グローバル投資インキュベーション・セグメントでは、国内外のスタートアップ企業への投資・育成を通じて新たなイノベーションの創出を目指しています。
特に、web3や生成AIといった次世代テクノロジーの社会実装に力を入れている点が注目されます。
今後の展望として、同社は決済プラットフォームを事業基盤としながら、DX/フィンテック領域での新規事業開発や、次世代テクノロジーの社会実装を加速させていく方針です。
しかしながら、グローバル投資インキュベーション・セグメントにおいては、投資先の公正価値評価の変動が業績に影響を与えるリスクを内包しています。