スポーツ用品銘柄10選:藤倉コンポジットの専門技術やミズノのブランド多角化に見る、多彩な成長アプローチ

ブリヂストン

スポーツ用品市場は、健康志向の高まりやライフスタイルの多様化を背景に、技術革新を伴いながら常に新たなニーズが生まれ、成長を続ける魅力的な分野です。

こうした市場で企業が展開する戦略は多岐にわたります。各社は独自の技術開発力を基盤とし、素材科学の追求や精密加工技術の研鑽など、長年の研究開発に裏打ちされた技術で製品の差別化を図り、競争優位性を確立しています。

また、ブランド戦略も成長の鍵であり、世界的に認知された自社ブランドの育成や海外有力ブランドのライセンス展開などを通じて、市場への浸透を図っています。

本記事では日本の株式市場に上場し、独自の強みを持つスポーツ用品関連企業に焦点を当て、その事業内容や市場での取り組み、今後の方向性などを紹介します。

高機能シューズで世界に挑む「アシックス」

アシックスは、主力である「ASICS」ブランドに加え、歴史と独自性を持つ「Onitsuka Tiger」ブランドも展開し、世界中のアスリートからファッション感度の高い層まで、幅広い顧客に支持され、グローバル市場で有力な地位を占めています。

同社の強みは、長年の研究開発に裏打ちされた高い技術力にあります。特にランニングシューズ分野では、衝撃緩衝材「GEL(ゲル)」テクノロジーをはじめとする革新的な技術を次々と生み出し、業界内で確固たる地位を築いています。

この技術的優位性は、トップアスリートのパフォーマンス向上に貢献するだけでなく、一般ランナーや健康志向の消費者の快適なスポーツライフを支える基盤となっています。

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近年アシックスは、パフォーマンス分野で培った技術力とブランドイメージを活かし、ライフスタイル分野へも積極的に事業を展開しています。

「Onitsuka Tiger」のヘリテージ(歴史的資産)や、「ASICS SportStyle」が提案する機能美は、新たな市場を開拓する原動力となっています。

また、これにより競技用製品に加え、ファッションや日常シーンにも対応する製品ラインナップを拡充し、事業ポートフォリオの多様化を図っています。

今後も、高機能ランニングシューズ市場でのリーダーシップ維持を目指しつつ、ライフスタイル分野での事業拡大にも注力していく方針です。

好調なアシックスの業績について、詳しくは「オニツカタイガーなど「カテゴリ経営」が飛躍の起点に。アシックスの業績が良すぎる件」で紹介しています。

100年の歴史と革新でスポーツ界を支える「ミズノ」

美津濃株式会社(ミズノ)は、大阪に本社を構え、野球やゴルフ用品をはじめ、各種スポーツウェア、シューズなど、多岐にわたる製品ラインナップでアスリートから一般のスポーツ愛好家まで幅広く支えています。

国内市場において、ミズノは長年の歴史を持つブランドとして広く認知されています。特に野球やゴルフ用品などの分野では長年の実績を持ち、競技スポーツ分野での販売は好調に推移しています。

これらの分野で培ってきた経験やノウハウは、同社の製品開発における特徴の一つとされています。

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ミズノの強みは、伝統的な得意分野に留まらない点にもあります。

近年では、サッカー関連製品や、ファッション性を意識したライフスタイルシューズ分野での成長が顕著。さらに、スポーツ分野で培った知見を活かしたワークウェアの開発・販売も好調で、事業の多角化を進めています。

今後、ミズノは伝統的な強みである競技スポーツ分野での基盤を維持しつつ、ライフスタイルやワークビジネスといった分野での事業拡大を目指す方針です。アジア地域やECチャネルでの販売強化も進めており、グローバル市場での展開にも注力しています。

精密技術で世界のサイクルシーンをリードする「シマノ」

シマノは、大阪府堺市に本社を置き、自転車部品と釣具の製造・販売をグローバルに展開する企業です。

特に変速機やブレーキといった自転車部品の分野では、世界市場において圧倒的なシェアと存在感を誇っています。長年にわたり培われてきた精密加工技術から作られる「SHIMANO」ブランドは、高品質・高性能の代名詞として世界中のサイクリストから信頼を得ています。

この技術力は釣具分野にも活かされており、釣用リールを中心に高性能な製品を提供し、有力なブランドとしての地位を確立しています。

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同社は、プロ競技者向けから一般消費者向けまで、幅広いラインナップを展開しています。世界各国の自転車完成車メーカーとの関係性も、同社の市場での地位を支える要素の一つです。技術革新への継続的な取り組みは、業界のスタンダード形成にも影響を与えているとされています。

主力の自転車部品事業は、世界的な需要を背景に展開されています。グローバルな市場での活動と技術力は、事業の基盤となっています。短期的な市場変動や為替リスクは事業環境の要素として認識されていますが、同社は事業運営における収益性を重視しています。

有力ブランド展開で成長する「ゴールドウイン」

1951年設立のゴールドウインは、スポーツアパレルメーカーです。「Goldwin」ブランドに加え、「The North Face」等のライセンス生産・販売を手掛け、特にアウトドア分野で強みを持っています。

国内で人気ブランド「The North Face」等のライセンス権を持つ点が最大の強みです。これにより国内アウトドアアパレル市場で主導的地位を確立し、高いブランド力と集客力を確保しています。

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同社の自社ブランドである「Goldwin」では、スキーウェア開発で培った技術力を活かして、高品質・高機能ウェアを提供。他にも有力海外ブランドを効果的にマネジメントし国内で成功させる手腕は高く評価され、独自の地位を築いています。

主力アウトドア市場での地位維持に加え、自社ブランドの育成にも注力していく方針です。

ゴールドウインの特集記事はこちら
>ザ・ノース・フェイスの成功で収益性向上。今後は自社ブランド「ゴールドウィン」で海外での成長を目指す


世界のバドミントン市場をリードする技術力「ヨネックス」

ヨネックス株式会社は、東京都文京区に本社を構えるスポーツ用品メーカーです。

主力事業はバドミントン、テニス、ゴルフ用品の製造・販売であり、世界中のアスリートから高い支持を集めています。近年はスノーボードやロードバイクといった分野へも進出し、スポーツ用品事業の多角化を進めているのが特徴です。

バドミントン分野では、世界トップブランドとしての地位を確立しています。長年培ってきた高い技術力と、トッププレイヤーからの信頼に裏打ちされたブランド力が、同社の競争優位性の一つとされています。

テニス分野においても、高品質なラケットを中心に市場で確固たる地位を築いています。

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同社の強みは、ラケットスポーツで培った技術革新と世界的なブランド認知度にあります。これを活かし、ゴルフやスノーボードなど、隣接するスポーツ分野へも積極的に製品ラインナップを拡大中です。

特に成長著しいアジア市場、中でも中国でのバドミントン人気を背景とした販売拡大は、同社の成長を牽引する重要な要素となっています。

アジアを中心としたバドミントン市場は成長傾向にあり、同社はこの市場での事業展開を重視しています。確立されたブランド力を活用し、他スポーツ分野でのシェア拡大にも取り組んでいます。

>ヨネックスのグローバル成長戦略の解説記事はこちら

世界をリードする釣具ブランド「DAIWA」を擁する「グローブライド」

グローブライドはフィッシング事業を核に、ゴルフ、ラケットスポーツ、サイクル事業を展開する企業です。「DAIWA」は世界的な釣具ブランドとして広く認知されています。

経営の基盤は、売上の約9割を占めるフィッシング事業にあります。「DAIWA」ブランドは、その高い技術力、品質、豊富な製品ラインナップで、世界の釣具市場をリードする存在です。

このブランド力は、同社の強みの一つとされています。

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釣具事業で培ったノウハウを活かしつつ、ゴルフ(ONOFF、FOURTEEN等)、テニス(Prince)、サイクル(Corratec等)の各分野では、それぞれ異なるブランドを展開し、専門性の高い製品を提供しています。グローバルな製造・販売ネットワークも有しています。

同社は、フィッシング事業を基盤としつつ、ゴルフやテニス、サイクルといった他事業の育成にも取り組んでいます。フィッシング事業への集中度は事業特性の一つですが、「DAIWA」ブランドなどを活用した事業展開を進めていく方針です。

高機能ウェアでアスリートを支える「デサント」

デサントは大阪と東京に拠点を置く大手スポーツウェアメーカーです。スキー、野球、陸上、ゴルフ等の高機能ウェアを開発・販売。自社ブランド「デサント」に加え、「アンブロ」や「アリーナ」等のライセンスブランドも展開しています。

日本と韓国の市場で強固な事業基盤を築いており、さらに中国においても堅調に伸長しています。

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同社の強みは、高機能素材の開発や動作解析に基づいたパターン設計など、スポーツパフォーマンス向上に貢献する技術開発力にあります。特にスキーウェアや野球ウェアではトップアスリートからの信頼も厚く、その品質と性能が評価されています。

複数のブランドポートフォリオにより、幅広いスポーツカテゴリーと価格帯をカバーし、市場リスクを分散している点も特徴です。

同社の製品は機能性だけでなくデザイン性にも優れており、スポーツシーンに留まらずライフスタイルウェアとしても展開しており、多様なニーズに応える製品開発力を有しています。

タイヤ技術を活かしスポーツ分野へ展開「ブリヂストン」

1931年設立のブリヂストンは、タイヤ製造・販売で大手として知られる企業です。その多角化戦略の一環として、グループ会社のブリヂストンスポーツにてゴルフ用品(「TOUR B」ブランド)やゴルフスクール運営などを手掛けています。

スポーツ用品事業は、ブリヂストングループ全体から見れば多角化事業の一部という位置づけになります。

連結売上高全体への貢献度は大きくありませんが、ゴルフ市場においても長年の実績とブランド力により一定の存在感を示しています。

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この事業の最大の特徴は、同社グループの強みである高分子材技術をはじめとする、素材に関する高度な技術力を、特にゴルフボール開発に応用している点です。「接点の科学」という考え方に基づき、ボールのインパクト時のつぶれをコントロールし、初速とスピン性能を最適化する独自の技術が採用されています。

グローバルに認知された「Bridgestone」ブランドの信頼性も、スポーツ用品分野における大きな強みとなっています。さらに、巨大企業グループの一員としての豊富な経営資源や、強固な財務基盤も事業展開を力強く支えています。

ゴルフ市場は競争が激しいものの、ブリヂストンは有力なプレーヤーの一角として、今後もその地位の維持・強化に取り組んでいく方針です。

「XXIO」「Srixon」でゴルフ市場をリード「住友ゴム工業」

住友ゴム工業はタイヤ事業を中核としつつ、スポーツ事業(ゴルフ、テニス用品等)も重要な柱として展開する企業です。

スポーツ事業は連結売上高の約1割を占める重要なセグメントであり、特にゴルフ用品市場においては、複数の強力なブランドを擁し、有力なグローバルプレーヤーの一角を占めています。また、テニス分野でも歴史ある「Dunlop」ブランドなどを展開しています。

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ゴルフ事業における最大の強みは、「XXIO」(アベレージ/シニア層向け)、「Srixon」(アスリート向け)、「Cleveland Golf」(ウェッジ等)という特性の異なる強力なブランドポートフォリオです。

これにより幅広いゴルファー層をカバーし、高い市場競争力を維持。タイヤ事業で培われたゴム・素材技術をゴルフボールやテニスボール開発に応用できる点も、技術的な優位性につながっています。

スポーツ事業では強力なゴルフブランド群を活かし、グローバル市場、特に北米市場での取り組みを強化しています。競争の激しい市場環境の中で、ブランド力と技術基盤を活かし、事業の成長を目指していく方針です。

高性能ゴルフシャフトで世界をリード「藤倉コンポジット」

藤倉コンポジット株式会社は、ゴム部品などの産業用資材を主力としながら、スポーツ用品事業も重要な柱として展開する企業です。

スポーツ分野では、高性能ゴルフ用カーボンシャフトの「Fujikura」ブランドや、アウトドア用品の「キャラバン(Caravan)」ブランドを手掛けています。

スポーツ用品事業は同社の重要な事業の一つであり、連結売上高において一定の割合を占めています。また、同社の収益に貢献する事業の一つです。特にゴルフシャフト分野では、高性能カーボンシャフトのメーカーとして世界的に認知されており、国内外の多くのゴルフクラブメーカーに製品を供給しています。

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同社のコア技術である複合材料(コンポジット)技術が、スポーツ用品開発の基盤となっています。

今後の成長戦略として、ゴルフシャフト市場におけるリーダーシップを維持しつつ、アウトドア市場での地位強化にも取り組む方針です。スポーツ用品セグメントは、同社にとって重要な事業分野と位置付けられています。

複合材料技術を活かした継続的な製品開発は、同社の重要な取り組みの一つです。これにより、スポーツ用品事業の発展を目指しています。