営業も商品開発も『現場発』──ミルボンの唯一無二のビジネスモデルを解剖

ヘアサロン専売のヘアケア製品メーカー、ミルボンは創業から65年を迎え、日本の美容業界で独自の地位を築いている企業だ。事業領域は一貫してプロフェッショナル(美容室・美容師)向けに絞られており、一般消費者向け製品は扱わない。
国内プロユース市場で約17%のシェアを占め、1999年以降トップシェアを維持してきた。2024年には連結売上高513億円に達しており、安定した成長軌道に乗っている。一般には目立たない存在ながら、美容室向けヘアケア市場では欠かせない存在と言える。
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ミルボンの躍進の背景には、“現場発”に徹したユニークなビジネスモデルがある。営業活動から商品開発に至るまで、常に美容室の「現場」で得られる知見を出発点とし、美容師や顧客の声を製品・サービスに反映させている点が最大の特徴だ。
美容業界では近年、デジタルシフトや新興ブランドの台頭、消費者の購買行動変化など大きな変化が起きている。美容室のデジタル対応も加速し、国内では美容室軒数が27万軒を超えてなお増加する一方、市場の成熟や人材不足といった課題も指摘される。
本稿では、ミルボンが長年にわたり培ってきた“現場主義”の営業戦略と商品開発手法をひも解き、その独自モデルがどのように持続的成長を支えているのかを解説する。また、中期事業構想「Stage for the Future」によるグローバル展開やデジタル戦略(スマートサロンや milbon:iD)についても触れ、変化する美容市場に対応した同社の未来図を探る。