ネイルサロンもある火鍋レストラン!急成長する中国5位の外食チェーン「海底撈」

今回は2018年9月に香港市場へ上場したばかりの「海底撈(Haidilao)」をピックアップします。
(公式HP)
海底撈は1994年、 現CEOのZhang Yong氏と奥さんのShu Ping氏が夫婦で火鍋レストランをオープンしたのが始まりです。
四川省を中心に出店を重ね、1999年に陝西省・西安市へ進出。
その後も北京や上海など主要都市へ着々と出店エリアを拡大していきます。
2012年にシンガポール、その翌年にはアメリカにも店舗をオープンし、海外展開もスタートしました。
(三井住友銀行「中国外食業界の動向」)
2014年に100店舗を突破し、2015年に日本と台湾へ出店。
現在は全世界で300店舗を超えており、三井住友銀行のレポートによれば2017年の中国外食企業売上高ランキングで海底撈は5位にランクインしています。
売上高は着々と増加しており、2017年は106.4億元(1,754億円)、2018年は上半期時点で73.4億元(1,210億円)に達しています。
営業利益率も10%台と収益性も高まっています。
海底撈はデリバリーサービス等も展開していますが、売上のほとんどはレストラン収益。
2017年は103.9億元(1,710億円)と売上全体の97.7%を占めています。
海底撈の出店数を都市階級ごとに確認してみると、彼らの成長ドライバーが明確に表れています。
出店数が最も多いのが四川省などを含む2級都市で153店舗。
そして、出店ペースを急加速させているのが3級都市です。
(上場申請資料より)
これまでは広東省や江蘇省等の2級都市から北京や上海等1級都市へと進出していきましたが、近年は3級都市へと次々と店舗をオープンしています。
海底撈はユニークなサービス展開でも知られ、数多くのファンを獲得してきました。
麺を各テーブルで引き伸ばしてくれたり、伝統舞踊のパフォーマンスなども店舗内で公演しています。
女性向けのネイルサロンやキッズルームを併設するなど、食事以外のおもてなしも満載です。
また、「会計件数」を「全テーブル数」で割った*テーブル回転率(Table Turnover Rate)は上昇傾向にあります。
(*頂いたご指摘を受けて記載を修正)
特に1級都市は右肩上がりの上昇が続いており、現在は1テーブルの1日あたり平均が4.9回となっています。
回転率の向上に加えて顧客単価も上昇傾向にあります。
いずれの都市も上昇に傾向にあり、1級都市が106.0元(1,745円)まで上昇。
店舗数の増加だけではなく、店舗サービス強化による顧客単価上昇も海底撈の成長を加速させていることがわかります。
海底撈は2010年からデリバリーサービス「Hi Delivery」を提供しています。
火鍋セットをモバイルアプリやWechatから気軽に注文することが可能。
肉や野菜、スープから締めの麺まで、火鍋を楽しむために必要な食材は全て取り扱っています。
注文件数は着々と増加しており、2017年は70万件を突破しました。
サービス開始当初は団体向けの配送が多かったようですが、近年は各家庭の晩ごはんニーズも増えていることで顧客単価は低下傾向にあります。
海底撈のコスト構造を見てみると、食品等の仕入原価は改善傾向にあります。
仕入原価は2年間で3ポイント以上改善し、現在は41.8%ほど。
反対に人件費は30.0%と上昇傾向にあります。
財政状態もチェックしてみます。
総資産45.3億元(747億円)のうち現金・金融資産の合計が5.7億元(94億円)。
店舗などの有形固定資産が27.6億元(455億円)と資産全体の60%以上を占めます。
資産の調達元を確認してみると、利益剰余金などを含む株主資本(Capital and Reserves)が11.9億元(196億円)ほど。
借入金による調達は11.1億元(183億円)となっています。
営業キャッシュフローは継続的にプラスで推移しており、2018年上半期はすでに10億元(165億円)を突破しています。
2017年は店舗出店を加速させたことで、フリーキャッシュフローは1.6億元(26億円)ほどとなりました。
2018年9月の上場から下落が続いた株価は持ち直しており、現在の時価総額は928.6億香港ドル(824.2億元)です。
キャッシュ5.7億元と有利子負債11.1億元を考慮した企業価値(EV)は829.6億元。
2018年上半期の営業キャッシュフローから年額を20.0億元と見積もった場合41.5年分という大きな期待を受けている計算となります。
海底撈に対する市場の期待が大きい要因の一つとして、中国の外食産業が持つ大きな成長ポテンシャルが挙げられます。
(上場申請資料)
2017年現在のレストラン市場は4.0兆元(66兆円)ほどの規模で、一般的な個人経営レストランが3.2兆元(53兆円)と80%を占めています。
今後5年間で個人経営も堅調に増加していく一方、フランチャイズチェーンが1.0兆元(17兆円)、海底撈のようなセルフサービスレストランが2,931億元(4.8兆円)まで拡大。
セルフサービスレストランの年平均成長率(CAGR)は10%を超える見通しです。
当然ながら中華料理の市場規模は大きく、その中でも火鍋(Hot pot)は7,077億元(11.7兆円)と中華料理市場全体の17%を占めるまでに増加していきます。
着々と出店を重ねて成長を遂げてきた海底撈ですが、近年はテクノロジー投資も積極化させています。
最近ではパナソニックと共同で開発した「スマートレストラン」が大きな話題となりました。
パナソニック創業100周年の基調講演で津賀一宏社長は、海底撈の北京にあるスマートレストランに導入した「自動おかず倉庫」を紹介。
薄暗い設備内でロボットが淡々と作業をこなす光景は衝撃を与えました。
フロア内では配膳ロボットが動き回っており、人件費の効率化を実現。
「テクノロジー企業」としての彼らの今後にも非常に注目度は高まっています。
・参考